違和感あり。SNSで見かける「結婚式を結びました」って、丁寧っぽいけど間違っていると思う....
2025.04.05公開
「結びました」って言葉遣い、気にならない派ですか...?
最近SNSで見かけるようになったフレーズに、「結婚式を無事に結びました」という表現があります。
その言葉には、やわらかさや奥ゆかしさがあり、丁寧で美しい印象もあります。
実際、「結ぶ」という言葉にはポジティブな意味が多く、その響きをチョイスしたくなる気持ちもよくわかります。
ですが、あらためてその意味や文脈を考えてみると、ほんの少しだけ違和感を覚えるのも事実。
今回は、「結婚式を結びました」という表現がなぜ気になるのか、言葉の背景や使い方を整理しながら考えてみたいと思います。
「結ぶ」という言葉の本来の意味
「結ぶ」は日本語において、とても美しい意味を持つ言葉です。
✅ご縁を結ぶ
✅絆を結ぶ
✅契りを結ぶ
など、いずれも人と人との関係が深まることや何かがつながることを表します。
また、結婚自体を「結ばれる」と表現するのは、非常に自然で伝統的でもあります。
このように、「結ぶ」はどちらかというと「始まり」や「関係の成立」にまつわる言葉であり、「終わり」や「締めくくり」を示す言葉ではないのです。
「結婚式を結ぶ」は誰が何をしている?
では、「結婚式を結びました」という言い回しはどうでしょうか。
この文では、「結婚式」という“イベント”を「結んだ」という表現になっています。
しかし、結婚式という場が“縁を結ぶ”わけではなく、その中でふたりの関係が結ばれるのであって、式そのものを「結ぶ」という表現は、文法的にも意味的にも少しずれてしまっているように思えます。
本来の使い方であれば、
「ご縁が結ばれました」
「ふたりの絆を結びました」
といった方が自然で、意味も正確に伝わります。
おそらくスピーチの「結びの言葉」からの連想では?
なぜこのような言い方が広まりつつあるのかと考えると、たぶん多くの人が、**スピーチなどで使われる「結びの言葉」**のイメージから着想を得ているのではないかと感じます。
たとえば、披露宴の挨拶やスピーチの締めに、
「この言葉をもちまして、結びとさせていただきます」
と話すのは一般的な使い方。
このような丁寧で儀礼的な言葉遣いを参考にして、「結婚式の締め」を「結ぶ」と表現しているのかもしれません。
しかし、「結びとさせていただきます」はあくまで“話を締めくくる”意味の言葉であって、「結婚式」というイベント自体の終了に「結ぶ」を使うのは、やはり少し無理があるようにも感じられます。
「お開き」との言葉のねじれ
さらに、披露宴の最後でよく使われる表現には、
「それでは、これにてお開きとさせていただきます」という定番のフレーズがあります。
この「お開き」は、宴の終わりを丁寧に示す言葉。
つまり、「場を閉じる」「終了する」という意味合いです。
対して「結ぶ」は、前述のとおり「始まり」や「関係をつなぐ」というニュアンス。
つまり、
お開き=終わり
結ぶ=始まり
という、逆方向の意味を持つ言葉を、同じ「結婚式の終了報告」で使ってしまっている構図になるのです。
こうした言葉のねじれに、違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。
英語で「tie the knot」という言葉がありますが…
ちなみに、英語で「結婚する」ことを表す口語表現に、
tie the knot(=結び目を結ぶ)
という言葉があります。
これも、まさに「ふたりの絆を結ぶ」というイメージで使われており、古くはケルトの結婚式で実際に手を紐で結ぶ「ハンドファスティング」という儀式が由来とも言われています。
しかし「tie the knot」は、結婚という行為そのものを指す言葉であって、「結婚式が終わった」という報告には使われません。
つまり英語でも「“式”を結ぶ」という感覚はあまりなく、あくまで「ふたりの関係が結ばれた」という内容に限られているのです。
表現を選ぶときの、ちょっとした気づきとして。
もちろん、SNSでの言葉遣いに「正解」も「不正解」もありません。
その人が大切にしたい言葉で綴る、幸せの報告に対して、とやかく言うつもりはまったくありません。
ただ、人生の大きな節目である「結婚式」という出来事を記すときに、
では、どんな言葉がしっくりくる?
「結婚式を結びました」という言葉に代わる表現としては、次のような言い回しが自然かつ意味も伝わりやすく、おすすめです。
「結婚式を無事に終えることができました」
「たくさんの祝福に包まれた一日となりました」
「人生の新しいスタートを、皆さまに見守っていただきました」
「大切な人たちに囲まれて、夫婦としての第一歩を踏み出しました」
どれも、結婚式の終わりとこれからの始まりを、あたたかく言葉にできる表現です。
最後に。
言葉は、生き物です。
時代とともに少しずつ意味が広がったり、形を変えたりすることもあります。
だからこそ、「これは間違いだ」と決めつけるのではなく、「どんな想いを伝えたいのか?」を考えた上で、ふさわしい言葉を選ぶことが何より大切です。
あなたの幸せが、あなたの言葉で、まっすぐに届きますように。
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